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GML Report vol.6

脱炭素に“触れて・学び・取り組む”〜CO2モンスターをかいてみよう!~(@1OOORE こどもの学校)が目指すもの

GML Report vol.6
左から 株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 グリーン・マーケティング・ラボ ラボ長/プリンシパル/主席研究員 佐々木努、同ラボ コミュニケーションチーム チームリーダー/マネジャー 前田もと子、千里中央公園パークマネジメント株式会社 代表取締役社長 兼 エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社 経営企画室 オープンイノベーション推進部長 杉本良平さん、同部 公園事業担当 部長 原田綾子さん
▲ 左から 株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 グリーン・マーケティング・ラボ ラボ長/プリンシパル/主席研究員 佐々木努、同ラボ コミュニケーションチーム チームリーダー/マネジャー 前田もと子、千里中央公園パークマネジメント株式会社 代表取締役社長 兼 エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社 経営企画室 オープンイノベーション推進部長 杉本良平さん、同部 公園事業担当 部長 原田綾子さん

2023年の夏は、観測史上例のない酷暑となりました。脱炭素社会への転換が急がれる今、大阪府豊中市にある千里中央公園の活動拠点「1OOORE SCENES(センリシーンズ)」において、8月19日と20日の2日間、「脱炭素に“触れて・学び・取り組む” 〜CO2モンスターをかいてみよう!〜」が開催され、小学生を中心に、のべ37名が参加されました。
このCO2モンスターの催事は、1OOORE SCENESの運営に携わるエイチ・ツー・オー(以下、H2O)リテイリング株式会社が夏休み中のこどもたちを対象に開催した「1OOORE こどもの学校」の1つのコンテンツとして、株式会社日本総合研究所(以下、日本総研)グリーン・マーケティング・ラボが実施したものです。
脱炭素とモンスターを結びつけたユニークなこのワークショップはどのような思いから生まれ、こどもたちはどのようなモンスターを描いたのでしょうか?両社の杉本良平さんと原田綾子さん、佐々木努さんと前田もと子さんに再び集まっていただき、お話を伺いました。

地域の人たちと企業や行政をつないで、新しい活動を生み出そう

原田綾子さん(以下、原田)

エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社

原田 : H2Oリテイリングは、関西圏の地域に根ざした事業でいろいろな企業さんともつながっている会社です。1OOORE SCENESでは、地域の一員として地域と企業や行政をつないで、新しい活動がいろいろ生まれていったらいいなと思っています。「1OOORE こどもの学校 」は、1OOORE SCENESのコミュニティスペース「LABO(ラボ)」で夏休みのこどもたちのために1カ月間「仕事」に特化したイベントができたら面白いのではないかと企画し、いろいろな企業さんや大学さんなどにお声がけしました。

1OOORE SCENES は、豊中市の「千里中央公園再整備における活性化事業」の公募により、市とH2Oリテイリング、他参画企業が公民連携で整備を進め、2023年3月30日にオープン。元公園管理事務所をリノベーションして、1階はイタリアンカフェ「SEN℃(センド)」とコミュニティスペース「LABO(ラボ)」、ミニショップ「LAWSON(ローソン)」、2階は多目的スペースで構成。。
1OOORE SCENES は、豊中市の「千里中央公園再整備における活性化事業」の公募により、市とH2Oリテイリング、他参画企業が公民連携で整備を進め、2023年3月30日にオープン。元公園管理事務所をリノベーションして、1階はイタリアンカフェ「SEN℃(センド)」とコミュニティスペース「LABO(ラボ)」、ミニショップ「LAWSON(ローソン)」、2階は多目的スペースで構成。
原田綾子さん これまで地域の人とつながり地域活性化事業に携わってきた経験を活かし、千里中央公園を訪れる人たちと行政(豊中市)や企業など皆がつながる機会を作っている。
▲ 原田綾子さん
これまで地域の人とつながり地域活性化事業に携わってきた経験を生かし、千里中央公園を訪れる人たちと行政(豊中市)や企業など皆がつながる機会を作っている。

前田もと子(以下、前田)

株式会社日本総合研究所

前田 : 日本総研としては、企業だけでなく生活者の方々とともにカーボンニュートラルを進めていこうと、2023年4月社内に推進チーム「グリーン・マーケティング・ラボ(GML)」を設立し、9月には企業コンソーシアムCCNC(チャレンジ・カーボンニュートラル・コンソーシアム)を立ち上げました。『脱炭素って国や企業がやるものじゃないの?』と言う声もまだ多く聞かれるのですが、生活者も含めてみんなで進めていかないと間に合わないものだと思っております。ビジネスと暮らしの両面で脱炭素を進める活動を「みんなで減CO2(ゲンコツ)プロジェクト」と名付けて親しみやすいキャラクターやロゴを開発しました。

CCNCの実証キャラクター「減CO2(ゲンコツ)にチャレンジする仲間たち」
▲「減CO2(ゲンコツ)にチャレンジする仲間たち」
左から、猫の「ニャートラル」と「ギャートラル」、タヌキの「ゲンコツさん」
ワークショップ告知ポスター
▲ワークショップ告知ポスター

前田 : ワークショップ「CO2モンスターをかいてみよう!」は、SGDsなどの教育を受けた環境感度の高い若年世代やこどもたちに理解を深めてもらって、大人に広げていこうという発想で生まれました。身の回りで減らすことのできるCO2を見つけたら、モンスターの姿に描いてもらいます。自分の作ったモンスターには愛着が湧くので、脱炭素の意識や気づきを高めてもらうことが狙いです。ただ私たちの事業はこれまでBtoBが中心で、リアルなお客様との接点はほぼ皆無、この企画をどうやって実現しようかと考えていたところに、ちょうどH2Oさんからお声がけをいただきました。

前田もと子さん 日本総研内で、2023年4月に設立された「グリーン・マーケティング・ラボ」のメンバーとして、企業コンソーシアム(CCNC)を立ち上げる一方、「みんなで減CO2(ゲンコツ)プロジェクト」をプロデュース、本イベントの取り組みにつながった。
▲ 前田もと子
日本総研内で、2023年4月に設立された「グリーン・マーケティング・ラボ」のメンバーとして、企業コンソーシアム(CCNC)を立ち上げる一方、「みんなで減CO2(ゲンコツ)プロジェクト」をプロデュース、本イベントの取り組みにつながった。

原田 : この辺り(千里中央)の地域は、環境問題にも関心の高い方がたくさんいらっしゃるので、日本総研さんからお話を聞いた時にきっと合うのではと思いました。また課題解決のアプローチとして、身近な課題を見つけて絵にして、もっと身近に感じてもらうというプロセスが素晴らしいなと思いまして、私たちとしてもぜひお願いしますとなりました。

CO2モンスターを描けるかな?自分たちも実験台に

佐々木努(以下、佐々木)

株式会社日本総合研究所

佐々木 : コンソーシアム(CCNC)にサポーターとして参画している京都芸術大学芸術学部キャラクターデザイン学科や、京都精華大学マンガ学部キャラクターデザイン学科の学生さんにCO2モンスターを制作いただきました。その中で、先生方にキャラクターの性格づけやモンスターに仕立てて描くためのテクニカルなアドバイスをいただいたり、学生さんたちが感じたことや気づきをフィードバックしてもらったりして、それをこどもたちにどう還元していこうかと考えていきました。

佐々木努さん 日本総研内で、2023年4月に設立された「グリーン・マーケティング・ラボ(GML)」のラボ長として、企業コンソーシアム(CCNC)をはじめとする取り組みを統括、牽引している。
▲ 佐々木努
日本総研内で、2023年4月に設立された「グリーン・マーケティング・ラボ(GML)」のラボ長として、企業コンソーシアム(CCNC)をはじめとする取り組みを統括、牽引している。

佐々木 : 私たちとしては、大学生の反応も見ることができ、貴重な機会になりました。先生方や学生さんとディスカッションして、それからうちの社員や友人、僕自身のこどもにも描いてもらったり、僕ら自身も実験台になっていっぱいモンスターを描いてみたりして、その都度改善してチューニングしていきました。

予想外のモンスターが誕生する面白さ!親切な相棒キャラクターも

ワークショップで使用した資料

前田 : 当日は、まず私から5分くらい「地球温暖化って知ってる?」と最初に基本情報をインプットして、「その原因はどういうことかな」、「暮らしの中でもできることがあるんだよ」、「どんなところでCO2を減らせるかな」という話をしてから、「じゃあ、モンスターの絵を描いてみよう」という流れでプログラムを進めました。モンスターを実際に考える場面では、京都芸術大学の学生さんにフォローに入ってもらいました。

ワークショップ風景その1
ワークショップ風景その2

▲ワークショップ風景

原田 : こどもたちが描くモンスターは、大人が考えるモンスターの概念とは違って、予想を覆されましたね。悪いモンスターではなく、かわいいモンスターが多かったり、けっこう気弱なキャラクターがいたり、こどもならではの発想だなと思います。社会の課題解決を考えていくにあたって、ただ厳しく「ダメだよ」と言うのではなくて、視点を変えて考えるということが、こどもたちにとっても、親御さんたちにとっても大きな学びだったのではないかと感じます。

前田 : こどもたちの視点は、私たち大人よりもずっと暮らしの中のニッチなところを捉えていて、大人が思いつかないところを切り取っていたり。ほのぼのしてしまうものもありましたね。

原田 : ものすごく小さいモンスターとか(笑)、電気を消さずに寝ても代わりに消してくれる心優しいモンスターなど、手伝ってくれる相棒的モンスターもいて、さらに考えていったら、きっとまたいろいろ楽しいアイディアが広がるんじゃないかと思いました。

こどもたちの描いたCO2モンスターたち
▲こどもたちの描いたCO2モンスターたち

前田 : 参加したこどもたちには、「お父さんやお母さんのムダ行動から考えてもいいよ」と伝えていました。こどもたちは、自分が怒られたり注意されたりすることから考えるよりも、お母さんは電気をよく消し忘れているなとか、お父さんはテレビばっかり見ているな、といったことの方が考えやすいようでした。大学生もこどもたちの目線に合わせて、具体的なシーンを話しながら絵を描くフォローに入ってくれました。

原田 : 大学生がとても良い潤滑油になっていましたね。

出会うはずのない人がここで出会う。共創は面白いことが起こる

原田 : 1カ月間「こどもの学校」をやってみて実感したのは、1OOORE SCENESのこのスペース(LABO)は割とこじんまりしていて、10人ぐらいしか入れないんですよね。でもそのおかげで対話してゆっくりしゃべることができるので、これからもこの特質を生かしたいなと思っています。ここでいろいろなことをテストしながらアップデートしていけるとうれしいです。

杉本良平さん(以下、杉本)

千里中央公園パークマネジメント株式会社/エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社

杉本 : このスペースの名前である「LABO」の由来が、まさに実験室なんです。全く異なるものを一緒のフラスコに入れたらどんな化学反応が起こるかなというように、今まで出会うはずのなかった人や、出会うはずのなかった会社が、ここで出会うと面白いことが起こります。僕らは媒介役で、ここでこどもたちは日本総研という会社を知る。すると何か新しいものが生まれる。もしかしたら人生ってそういうことで変わるかもしれないですよね。ここでの出会いを通して未来がちょっと明るく見えたり、生きがいを感じられたり、「共創」で何かを一緒に創ろうとあまり難しく構えなくても、きっとただ出会うだけで意味があるんじゃないかと思います。

杉本良平さん 1OOORE SCENESには、H2Oリテイリング初の公園活性化事業としてスタートした時から参加。2023年2月からは千里中央公園パークマネジメント株式会社の社長を兼務している。
▲ 杉本良平さん
H2Oリテイリング初の公園活性化事業には、スタートした時から参加。2023年2月からは千里中央公園パークマネジメント株式会社の社長を兼務している。

杉本 : 1OOORE SCENESを立ち上げた時には、僕らも「この地域を盛り上げてどないかするんや(笑)」と言っていましたが、地域をつくるのは誰かの計画だけではないんですよね。やっぱりその場所にいろいろな人が入ってきて出会うことで、偶然がたくさん生まれるから活性化する。だから僕らの仕事は、このエリアをどうしようかなと考えることではなくて、いろいろな人をここに巻き込んでいくようにすることなのかなと思っています。

佐々木 : 「1OOORE SCENES」はH2Oさんの向こう側に豊中市さんがいらっしゃって、今回はその取り組み内のイベントにご一緒させていただいたのですが、他のエリアでもH2Oさんと自治体さんと連携しながら何かできたらよいなと思っています。

企業の人も、生活者であり消費者。皆が社会をつくるパートナー

佐々木 : 今回のようなワークショップのイベントに参加すると、生活者に戻った時の感覚を僕らも取り戻さないといけないなということが、よくわかります。普段は誰もがイチ生活者なのに、仕事モードに入った途端、そのことを大切にできずに忘れてしまうのは変ですよね。

前田 : 暮らしの話と仕事の話を分けてしまわずに、企業の人も生活者だということに立ち返ったところから、仕事でもお金だけじゃなく、環境のことを考えて取り組むことが増えていくのではないかなと思います。そういうことがちょっとでも増えるとよいのですが。

杉本 : 企業と消費者の関係は今、“一緒に社会を作っていくパートナー” なんですよね。「企業は売る人」「消費者は買う人」という枠組みや、何に対しても「それっていくら儲かるの?」という発想から抜け出さなくてはいろいろな社会課題は解決できないと思っています。

前田 : 一人ひとりが自分で能動的に考えて、まずは自分のできる範囲から、「地球をよくしよう」とか、「何かできることを私も頑張ろう!」という小さな気持ちがみんなの中に生まれていくような自律協生の社会をつくっていきたいです。そのためにはネットだけでなく、リアルの場も使いながらコミュニケーションしていくことが必要だと考えています。「モンスターをかいてみよう!」のような活動はどんどん続けていきたいし、生活者の方と触れ合う機会を持っておくべきだと思っているので、H2Oさんとのご縁を大切にしたいです。引き続きよろしくお願いします。

佐々木 : それから学生さんとの接点も、ずっと持っておきたいですね。今回のこのワークショップの中でも大事な役割を学生さんが果たしてくれたのと同じように、彼らが将来の社会の主役になっていった時により良い世界になるように、僕らが背中を押していけるような関係性を作っていきたいです。