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GML Report vol.5

環境学習列車・土佐くろしお鉄道の旅〜催事参加報告〜

GML Report vol.5

夏休みも終わりに近づく8月19日の土曜日に、土佐くろしお鉄道の宿毛-土佐佐賀間を往復する貸切列車で、「環境学習列車~土佐くろに乗って減らそうCO2~」のイベントが開催された。主催したのは、四万十市、宿毛市、黒潮町、高知県などから成る実行委員会で、環境をテーマにした貸切列車催事は今回が初めてだという。グリーン・マーケティング・ラボ(以下、「GML」)の活動を通じて知り合った高知県・環境計画推進課の森田さんを通じて、無理を言って筆者も同行させてもらった。

朝9時半に総勢63人(子ども50人、大人13人、関係者・スタッフ除く)が宿毛駅に集まった。漫画家やなせたかし先生がデザインした土佐くろしお鉄道のキャラクター「サニーくん」と「サンコちゃん」の着ぐるみに見送られ、10時過ぎに宿毛駅を出発、一同は列車に揺られて土佐佐賀駅を目指した。

道中、県や市・町から地球温暖化や環境の取り組みなどがモニターに表示され、社内放送を使った講義が行われた。揺れる車内で子どもたちはノートにメモを取るなど熱心に聞き入った。それもそのはず、夏休みの自由研究・調べ学習のテーマにしようと参加していたようだ。

高知県の森田さんからは、地球温暖化をテーマにした講義があった。高知県ではここ100年で平均気温が1.5℃上昇しており、21世紀末にはさらに約4℃上昇するということが紹介された。夏は暑すぎて外で遊べないかもということで、子どもたちからは「えっ~!」という声があがる。北極の氷が溶けてホッキョクグマが大変、と言われてもなかなか実感が湧かないが、夏に外で遊べなくなるというように身近な例で伝えられると温暖化の問題も自分ゴト化できる。

子ども達が貸切列車に乗り込む様子
貸切列車に乗り込む
土佐くろしお鉄道のキャラクター「サニーくん」と「サンコちゃん」のお見送り
土佐くろしお鉄道のキャラクター「サニーくん」と「サンコちゃん」のお見送り
高知県・森田さんの講義を貸切列車内で真剣に聞いている子ども達の様子
高知県・森田さんの講義

続けて、森田さんからは、そういう世界にならないように一人ひとりがCO2を削減する行動を起こすことの重要性が紹介された。ライフスタイルの見直しでCO2削減に貢献できること、省エネ性能の良い家電への買い替え補助制度など、画面に表示される内容をしっかりメモを取り、親子で話をする様子も見られた。

その流れで「CO2モンスターを描いてみよう」の紹介があった。CO2モンスターとは、地球温暖化を楽しみながら自分ゴト化するためにGMLが開発した学習キットだ。くらしの中の無駄な行動やCO2を排出してしまう行動を振り返り、それをモンスターに見立ててイラスト化する。この過程を通じて自身のライフスタイルを見直したり、親子で温暖化のことを話し合ったり、絵を描くことを通じて脱炭素行動を記憶・定着したりすることを狙ったものだ。後ほどの昼食時間の合間にモンスターを描きましょうとアナウンスされた。

土佐佐賀駅に到着
土佐佐賀駅に到着
CO2モンスターを描く子どもたち
CO2モンスターを描く子どもたち

程なく列車は土佐佐賀駅に到着。一同は漁協の施設に移動し、カツオのたたきの昼食をいただいた。半分観光気分の筆者はゆっくり舌鼓を打ちたかったが、仕事であることを思い出しCO2モンスターを描く子どもたちの様子を見て回った。描きたいことが決まっていてスイスイ筆を進める子、友だちと相談をしながら構想を練る子、友だちのイラストを真似ている子など様々だ。悪役としての「モンスター」ではなく、お助けマンのような「いい奴」をモンスターとして描く子どもも実は多い。大人が考える以上に子どもたちの発想力は豊かだ。

その後、環境列車企画としては、黒潮町の砂浜で清掃活動をした後、帰路では土佐くろしお鉄道や地元の大手スーパーマーケットのサニーマートの環境取り組みを学習した。途中、四万十川に係る有名な観光スポット、通称「赤鉄橋」が見える場所で列車は一時停止。筆者は車窓から見える赤鉄橋にシャッターを切るが、周りの参加者の関心はそれほどではなく、参加賞のお土産のお菓子詰め合わせに興味津々。そうでした、県外参加者は筆者だけでした。土佐くろしお鉄道さん、ご配慮ありがとうございました。

ウミガメもいた黒潮町の砂浜の景色
ウミガメもいた黒潮町の砂浜
車窓から見えた四万十川に架かる赤鉄橋
四万十川に架かる赤鉄橋・車窓から

こうして環境列車企画は無事終了した。回収したアンケートによれば、参加者一同の満足度は総じて高かったようだ。GMLが関与したCO2モンスターについても、「モンスターを描くのが楽しかった」や「CO2削減に取り組みたい」との回答がいずれも85%を超えていた。また、「かんきょうにやさしいことで、自分でできることがいっぱいあったからやりたい」や「これからは、今日習ったことを大人になってからも、ずっと気にしてCO2をあまり出さない取組みをしていきたい」(ともに原文ママ)というコメントもあった。参加した子どもたちにとって、環境列車企画は夏休みの思い出となるとともに、良い学習機会になったようだ。

株式会社日本総合研究所
リサーチ・コンサルティング部門
グリーン・マーケティング・ラボ
ラボ長/プリンシパル/主席研究員
佐々木 努