GML Report vol.4
生活者の行動変容で進める脱炭素
太陽光、洋上風力、蓄電池、水素、アンモニア、カーボンニュートラル。連日メディアを賑わせる脱炭素を巡るキーワードだ。
そうした脱炭素の話題の多くは、作る・運ぶ・売るなどビジネス領域でのCO2削減策に関わるものである。特に、CO2を「直接的」に大量に排出する大企業の動向に耳目が集まる。削減量や削減効率を考えると当然のことだろう。
その一方で、くらし領域のCO2削減は相対的に着目されていない。しかし、私たちは日々のくらしの中で最終消費者として色々な製品やサービスを購入し、「間接的」にCO2を排出している。この「間接的」に排出されるCO2から見ると、日本のCO2排出量の約6割が衣食住を中心とする「ライフスタイル」に起因する。
別の言い方をすれば、日々のくらしの中で環境負荷の低い製品やサービスを選択することで日本全体のCO2削減に大きく寄与できる、ということである。つまり、脱炭素社会の構築にはビジネスのCO2削減だけでなく、くらしの面からもCO2削減を進めていくことが重要なのだ。
そこで、くらしのCO2削減を進めるべく、日本総研は、本年9月5日に「チャレンジ・カーボンニュートラル・コンソーシアム(Challenge Carbon Neutral Consortium)」(以下、CCNC)を設立した。CCNCでは、生活者の脱炭素に係る意識・行動変容を促すことで、企業の脱炭素の取り組みを加速させ、脱炭素社会を構築することを目的に活動する。
この活動を始めるに際して、日本総研では「くらしとカーボンニュートラルに関する生活者調査」(N=14,205)を実施した。この調査から、脱炭素社会の構築のために埋めるべき理想と現実のギャップが明らかになった。
- 脱炭素に協力したいけど実現できていない
- 「脱炭素に資する商品を購入したい」と考える生活者(76%が回答)と同じくらい、「脱炭素に資する商品に出会ったことがない」と答える生活者(75%が回答)が存在する。
- 経済的インセンティブと同じくらい「きっかけ」が有用
- 脱炭素に資する商品の購入時に、「ポイント付与」を求める生活者(37%が回答)と同じくらい、「環境配慮棚の設置」を求める生活者(36%が回答)が存在する。
- 環境配慮の取り組みの伝え方に工夫が必要
- 企業は環境配慮の取り組みを商品に表示してもほとんどの生活者は見ないと思っているが、そうした内容を分かりやすく知りたいと望む生活者(35%が回答)が存在する。
これらは、多かれ少なかれ、これまでも色々な生活者調査で指摘されてきたが、そのギャップが解消されることはなかった。環境価値を訴求しても(少なくとも日用品においては)購買行動に結びつかないという固定観念化してきたからだ。「環境にいい商品を作っても売れないから売場に置いてもらえない」とメーカーが主張すれば、「環境配慮棚を用意してもそこに並べる商品は売れないからメーカーが作らない」と流通が主張する。そんな感じで「鶏と卵」の関係が長らく続いてきた。
一方で、前述したように、脱炭素や環境配慮商品を望んでいる生活者は少なからず存在する。CCNCでは、この生活者の潜在的なニーズを信じて、「鶏と卵」の関係に終止符を打つことで、市場創出の歯車が回り始めることを狙う。
- 生活者が脱炭素商品に触れる機会を増やす
- 脱炭素について楽しく学ぶ機会を提供する
- 脱炭素に興味をもち自分ゴト化できる生活者が増える
というステップを構築し、生活者の行動変容を明らかにする実証試験を行う。最初は小さな輪に過ぎないが、やがて大きな輪となり、脱炭素商品の市場が形成されていくことを目指したい。